顎変形症の治療をはじめるまで②心理面
親知らずを抜いたのは、ちょうど1年前。
下顎の両方の親知らずが横向きに生えていたのを、
一本は、島の歯科ですんなり抜歯できた。
けれど、もう一本は神経に近いので、大学病院で抜くようにと勧められた。
この機会にもしかしたら顎変形症のことを相談できるかもしれないと
半ば喜び勇んで大学病院に向かった。
大学病院での親知らずの抜歯手術は2時間に渡る長丁場。
実習で見学に来た学生さんが複数人付き、ドリル音と先生たちの会話にギリギリと脂汗を滲ませながらも、何とか無事に終わった。
そのときの大学病院の信頼できる雰囲気。
腕の立つ、親切で優しい執刀医の先生。
歯学部の学生さんや、研修医の先生方の真剣さ、
それを指導する教育現場たる医療現場。
みたいなものをビンビン感じて、憧れを抱いた。
執刀医の先生に顎変形症の治療を考えていることを少し話すと、
「(顎変形症で)手術が必要ならたぶん僕がしますよ」と言ってくださった。
ここで顎を治せたらなぁ。
高額な医療費を自分の贅沢とも言える顎の治療のために使うのには、
私には葛藤があった。
バカみたいだけど、
「世の中には食べるものにも困り、満足な教育も受けられない子どもがいる」。
私のお金で何人の困っている子たちを救えるのだろうか。
自分のこの考えが、顎変形症の治療を決めるまでにいつもどこかで重さになった。
でも、誰かに相談すると、
「それは違う」と言ってもらえることもあった。
「それはそうだけど、それとこれとは違う」
「そうは言ったって、あなたがみんなを救えるわけじゃない」
なんだか、そうだけど、そうでもないような、その通り。
でも、親知らずの治療を受けたことで、
この治療は、少なくとも研修医の先生や実習生の勉強にはなったのだ。
抜歯という、私にとっては初めての大掛かりな手術も、
それほど恐れなくてもいいんだともわかった。
私は私のお金で、正正法で治したんだ。
額変形症を治して、前向きになって、その分を社会に還元できるように。
そうしよう。